群青の空を越えて
・あらすじ
日本を政治的に分割し、極東アジアにEU型の統一通貨圏を築こうという「円経済圏構想」。
しかし関東政府は政治だけでなく国家としての独立を宣言。
巨大な資本を1人抱えて独立せんとする関東政府に対し、それを阻止しようと関西政府は機動隊・自衛隊を動かす。
関東ではこれに反発し多くの学生が武装蜂起する。
ドルに対抗する新たな機軸としての円経済圏確立を望むEUは関東、日本の再統一を望むアメリカは関西を支援。
国連軍の介入により停戦状態となった今も、監視団の目を盗んだ戦闘行為が繰り返されていた。
…と簡単にあらすじをまとめるのも面倒な程、大真面目な政治・経済のお話。
戦争モノというイメージが強い作品ですが、どちらかというと政治経済の話です。
てっきり主人公達が戦闘機に乗って俺TUEEする話だとばかり思ってました。ごめんなさい。
イメージとしてはユーゴスラヴィアの紛争が近いかもしれません。
ユーゴスラヴィア→日本
クロアチア→関東
セルビア→関西
と見ると、イメージ掴みやすいと思います。
いつ自分が死ぬかわからない戦時下の学生達、その不安定な心境や心の葛藤が、この作品の見所です。
求める理想のために戦いの場に身を投じ、過酷な訓練で恐怖を忘れさせる。
そんな学生達の時折見せる本音や理想と現実の違いに悩む姿が非常に重苦しく、リアルです。
特に、戦いの中で命を落とす者の描写がよい。
特別な演出も無く「出撃しました」「帰ってきませんでした」とあっさりと散りゆく命。
非情にも、淡々と、命が失われていく様子は、戦いの残酷さをよく表していました。
各ヒロインのルートごとに展開が大きく変わってくるのも、この作品の特徴です。
特に加奈子ちゃんルートの終盤、テーマソング「アララト」のオーケストラver.が流れるシーンは痺れます。
戦闘シーンも数は少ないものの、その緊張感は手に汗握るものがあります。
主人公含めてフルボイスである点も相まって、臨場感をうまく出していたと思います。
まるで映画のよう。
これだけならば文句無しの名作だったのですが、残念な点も。
とにかく恋愛部分がつまらない。
恋愛というより心の拠り所の関係、といった不恰好な付き合い方が、どうにも気に入りませんでした。
こればかりは戦時下という舞台設定があるので淡白な恋愛になるのも仕方無いのかもしれませんが…。
もっと素直に「俺はお前が好きだ!お前を守るために俺は戦う!」みたいな熱い感じが好きです、私は。
そしてHシーンで主人公が早漏で、ちょっと萎える。
恋愛要素無しのお堅い感じで作ったら、もっと楽しく読めたと思います。
ゲームクリア後に聴くテーマソング「アララト」は別格です。
その歌詞がこの物語全てを表しているので、初めて聴いたときとはまったく違う想いで聴くことになると思います。
他のエロゲーとは異なる雰囲気を持った、印象深い作品でした。 |